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学園を舞台にした宇宙飛行士ライダーから、精神世界を舞台にした魔法使いライダーへ。こう書くとまるで正反対の方向へモチーフを振ったかに見える新しい仮面ライダーのウィザードですが、フォーゼが宇宙科学と標榜しながら、その実コズミックエナジーやコアチャイルド、宇宙意思などがバンバン出てくるトンデモ設定であったことを考えると、「オカルトつながり」という点で共通しているかもしれません。
もっともオカルトパワーで変身しない平成ライダーなんていたでしょうか。オカルティックな変身資格を求めずに変身できるのカブトくらいかもしれません。サブライダーならG3とかイクサ、バースなど純粋なメカライダーはいますけども。

それはさておき、主人公がヤンキーからビジュアル系(メンナク系?)へ。変身アイテムがスイッチ収拾から、指輪収拾へ。敵は「負の感情」から「絶望」へ。テーマは「絆・友情」から「希望」へ。…と順当にマイナーアップデート。マーチャンダイジングを徹底しながら、現代のニッポン人的のたたずまいをリアルに描いて、311後の歩き方の糸口を示すあたり、今のヒーロー番組はいろいろしょい込みすぎな感もあります。しかし、考えようによっては、そろそろ東アジアで「仲良くしようぜ」、それが無理でも「仲悪く共存しようぜ」ってテーマの作品も出てきて然るべきかもしれません。ほら、ビジネス的にも市場が広がりますし。

フォーゼ最終回

ところで、フォーゼの極私的な総括ですが、途中でアストロスイッチ疲れに陥ったことからもうかがえるように、ぼくとしてはいまいち作品世界にハマりきれなかったようです。強烈な箱庭世界は、肌にあえばどっぷり浸かることができますが、どこかで違和感を抱えてしまうとすーっと離れてしまいます。自分で言うと風都は皆勤できたけど、デンライナーと天ノ川学園高校は途中で行くのをサボっちゃったみたいな感じです。

そう、仮面ライダー部の友情も良いんですが、もっと天ノ川学園高校を描いて欲しかったっちゅーのはあります。まるでジョジョ第4部の杜王町みたいな、香港にあった九龍城砦みたいな魔窟感にあふれてても良かったんじゃないかなあとか。あるいは『涼宮ハルヒの憂鬱』『うる星やつら』みたいに学園モノなんだけど、敵の生徒はほぼエイリアンみたいな荒唐無稽感とか。それじゃ丸パクリか。

ウィザード第1話


そして、ウィザードのパイロットです。ヒーロー番組を始めるにあたり、ヒーローのビギンズ(生い立ち)を描くか描かないかという問題があります。ビギンズを描くことで、ドラマの世界観を、主人公視点で視聴者にチュートリアルすることができます。平成ライダーでいうと、番組が始まってからライダーになるのは『クウガ』『龍騎』『ファイズ』『カブト』『電王』『ディケイド(?)』『オーズ』『フォーゼ』ですね。どっちが良いといった話ではありませんが、ウィザードのようにすでにライダーである場合はテンポ良く番組をスタートできるメリットがあります。

なので珍しく平成ライダー第1話にしては珍しく、初手からいきなり戦闘シーンてんこ盛り。伏線をばらまいて物語に引き込ませるというよりかは、おもちゃのデモンストレーションをしてプロモーションする比重が高いと言いますか、子どもとおもちゃ好きのおっさんにはこれで十分です。

ただ。ただ、ぼくはまだウィザードのデザインが好きになれないんですよね。実際に見てみると響鬼っぽいマスクデザインや、手をモチーフにした変身ベルトが面白いと思うものの、変身スタイルのバリエーションがただ色を変えただけの印象がして(実際そうなんですけど)、なんかやっつけ感を禁じ得ません。番組が始まるまではダサっと思っていたオーズやディケイドも実際に動いているのを見たらカッコ良かったりしたんですけどねー。

これはひとえに人件費と原材料費の高騰で、ソフビを始めとしたフィギュアの制作費を極力おさえた「工夫のためのデザイン」な気がしてなりません。だって840円のウィザードソフビは4種のスタイルとも、下半身と両腕はリペイントされただけの共通パーツですからね(実物を見ていないので左指にはめられている変身リングの成型までは未確認)。後は一体化された頭・胴体パーツのディテイルを変えるだけですもの。もちろんこれはクウガから脈々と続くコスト削減のための伝統でもありますが、シンプルに色味を変えただけに見えたダブルですら地味に腕パーツも変更していたことを考えると、もしかしてウィザードは極限までパーツの共用化をはかった平成ライダーデザインの最終回答と言えるかもしれません。
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でも実際こうして見るとカッコいいですね。きっと冬のMOVIE大戦のプレミア付き前売拳の特典が、フレイムスタイルの重塗装版になると思われますので、そっちを期待します。

そんなわけで変身ベルトは落ち着いて安くなったら買っても良いかもしれません。ライダーリングはシルバー基調に複眼のみ宝石っぽいデザインで、ライダースイッチと同じように見えるのを回避しつつ原価を抑えたのはさすがだなと思いました。

肝心のボス戦は、被害者(ゲート)の心理風景に入り込んで、そこで被害者それぞれの希望の象徴を破壊するファントム(絶望)をやっつけるという構成で、いわば電王が過去に逃げ込んだイマジンをデンライナーで追いかけるのをうまく焼き直している感じです。デンライナーは別として、これまでのライダー系巨大玩具はヒットしていないのでどう転ぶかは見ものであります。

というわけで、今年もまた平成ライダー新年度が始まりました。それにしても主題歌が下手すぎてびっくりしたんですが、あれを1年聴かなくちゃいけないんでしょうか。

関連リンク
仮面ライダーウィザード|テレビ朝日
仮面ライダーウィザード|東映