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さいきん旅系エントリばっかりだったので、ちょっと趣向を変えてライターに必要な7つ道具を考えてみました。実は飲みの席で、「ライターのスターターキットとは」みたいな話をしていたら、某メディアの編集者から「“ライターこと始め”というか、“ライターモノ始め”みたいな連載記事ってありかもですね」と提案されたんですけど、2年以上経っても音沙汰がないのでブログで書いちゃおっかなと。「ライター 7つ道具」で検索してもろくな記事が出てこないし。
ライター7つ道具
・パソコン
・メモ道具
・ICレコーダー
・デジカメ
・名刺
・腕時計
・プリンタ

・バックアップ

パソコン


昨日、2000年発行の雑誌をパラパラめくっていたら、その頃はまだ紙に鉛筆で原稿を書いている様子が記されていて、「マジかよ!」っておののいたくらい、こんにちの執筆道具はパーソナルコンピューターです。もちろん、ペンで書こうがポメラに打とうがライターの自由ですが、納品する際はテキストファイルなり、Wordファイルなりにまとめるのがエチケット。エチケットというか、よっぽどの大御所や、えらい僻地にいてFAXくらいしか送れないといった特別な事情がない限り、メール入稿できない書き手の原稿は受け付けてくれないでしょう。

パソコンのスペックは、ブラウザとOfficeがまともに走ればMacでもWindowsでもなんでもOK。ただ、長くライターをやっていると「出先で原稿を書いて入稿して」とか、「編集部に来て作業して」といったノマド的状況に見舞われることがなくもないので、持ち運びしやすい13〜15インチのノートパソコンを選んでおいた方が無難でしょう。重さの限界は1.5kg、デイリーに持ち歩くなら1kg以下。

安さを追求すれば3〜5万円くらいのモデルもありますが、もっとも長時間向き合うメインの仕事道具でもあるわけですし、「サクサク軽快に動くスペック(Intel Core i5、メモリ16GBなど)」「10時間ていどはもつバッテリー(ACアダプタも小さいものを)」「高精細な液晶やフォント(写真を選んだりイジったりすることもあります)」「打ちやすいキーボード」といった視点でこだわりたいもの。きっと10万円は下りませんが、月1万円稼げば1年間でペイできる額です。

オススメは、Macなら──賛否ありますが──最近出たばかりのMacBook Pro 13インチ。WindowsならSurface Pro 4(後述)かLet's Note(頑丈)のほどよきモデルでしょうか。Surfaceは来年頭にも5が出そうなので新型まで待つか、安くなったところを襲うか、好みでどうぞ。

ちなみにぼくは、メインマシンがMacBook Pro Retinaディスプレイ 15インチの初代モデルで、お出かけ時にはMacBook 12インチを利用しています。



メモ道具


最低限、取材に必要な道具といえば、ペンとメモ帳でありましょう。メモ帳やメモ術に関しては、それだけで本が一冊書けるほどのうんちくがあるため(ぼくもメモ術の本を出しているって知ってました?)、ここでは「好きなものを使いなさい」としか言いませんが、ある程度の指針として──

・ペンとメモ帳を一緒に持ち歩けるもの
・いつでもメモれるようポケットに収まるサイズ
・立っても書けるようコシや芯がある
・赤字を入れる場合もあるので2色以上のボールペン

といった条件は抑えておいた方がよいかもしれません。

なお、テック系ライターや、記者クラブに所属する新聞記者には取材メモを直接ノートパソコンに打ち込む方もいますが、インタビューイーによっては不快感を示されるケースもあるので、アナログの筆記用具は携行した方がよいでしょう。

と言いながら最近のぼくのメモ道具は、iPad Pro 9.7インチとApple Pencilで文房具レス。「Notability」という統合メモアプリに、「手書きメモ」をはじめ「録音メモ」「写真」「OfficeやPDFファイル」「ホームページのキャプチャ」など、ありとあらゆる素材をぶち込んでいます。特に、手書きメモと録音メモが同期されるのと、PDFに直接書き込めるのはめちゃくちゃ便利。

もっともメモ道具のくせに10万円以上し、本格的な原稿執筆には別途パソコンも必要だったりするので、スターターキットとしては不適当かもしれません。そこでオススメしたかったのが前述のSurfaceで、スタイラスと「OneNote」を使えば似たようなことができる上、腐ってもWindowsなので原稿執筆にも十分。OSにこだわりがなければ選んでおいて間違いはないでしょう。



ICレコーダー


取材時の録音に必要な道具ですが、前述したように「Notability」や「OneNote」といった統合メモアプリを使う場合は不要です。また、スマホの録音機能を使えば代替できないでもありません。

とはいえ、複数名相手のインタビューとなると、誰が何を話したかがクリアに判別できる、高音質なICレコーダーがあると心強いもの。また、記者会見などの場合は登壇者の近くにICレコーダーを置けたりするので、まったく出番がないわけではありません。

オススメは「高音質なリニアPCM録音ができ」「パソコンに直接挿して音声ファイルが取りこめるUSBコネクタ内蔵」モデルです。

とりわけ大切なのはパソコンへの取り込みで、なぜならICレコーダーの小さい操作ボタンでは、ちょっと巻き戻したり、くり返し再生したりといった「テープおこし」の作業が異常に面倒くさいからです。だったら、いったん取りこんでテープおこしソフトで再生した方がいくらかストレスフリー。かつては早送りや巻き戻しに便利なジョグダイヤルが付いていたモデルもあったんですが、最近はどうなんでしょうね。

もっとも、前述した「Notability」や「OneNote」では、録音メモの頭出しが「手書きしたメモをタッチするだけ」(言っている意味がわからないだろう)とおそろしく簡単なので、今さらICレコーダーなんて使う気になれません。

余談ですが、許されるものなら複数名のインタビューは動画で記録した方が無難です。誰が何をしゃべっているか一目瞭然ですし、スマホで撮った動画ファイルならタイムバー(シークバー)をなぞるだけなのでテープおこしにも便利だからです(SKE48の取材もそれで乗り切った)。



デジタルカメラ


デジカメはライターにとって必ずしもマストな道具ではありませんが、いまや「書くだけ」の純粋なライター業なんて存在しうるのかあやしいところです。特に駆け出しの場合は。

もちろんペロッとスマホ写真で済ますこともできます。実際、知り合いの旅行ジャーナリストのおじさんは、SNS用から新聞記事用まで写真はすべてiPhoneで撮影しています。まあ、十分でしょう。

そのスマホが最低限の撮影機材として、どこまでやるかは人それぞれ。

原稿にくわえて写真がもうひとつの売りならば、高級コンデジやミラーレス、一眼レフへとこだわりたくなるでしょうし、たとえ被写体がお偉いさんだろうが何だろうがiPhoneカメラを向けられる胆力があれば追加費用は一切いりません。

ぼくの場合は、カメラマンが同伴しない仕事も多く、こうしてブログもやっていたり、もともとカメラや写真が好きだったりするので、自らすすんでカメラを買って撮影しています。が、ライターを始めるにあたって、なくなくカメラを買わざるをえないという方もいらっしゃることでしょう。

そんな方にとってのカメラは、「仕事やってる感」と「適当に撮ってもキレイ」が大事なので、悪いことは言いません、エントリーモデルのデジタル一眼レフにしといて間違いありません。わからないついでに機材まで指定しますと、キヤノンのEOS Kissに、シグマの安くて明るい標準ズーム(17-50mm F2.8)を付けておけば十分です。予算8万円てところでしょうか。

買ったらダイヤルをAにあわせて、F値と露出をあれこれイジながら写真を撮っていればおのずと使い方がわかるでしょう。ちなみにこれまで聞いた構図のコツで、もっとも役に立ったアドバイスは「四隅に何が写っているか意識する」です。



名刺


だんだんネタが切れてくるしゅうなって来ましたが、もしかすると一番最初に用意しなくてはいけないのが名刺です。これ1枚でありとあらゆる場所へアクセスできる魔法のお札とも言えます。

問題はデザインと紙質。

なんせライターなんていう虚業において、とりいそぎ目で見て触れられる商品なんて名刺くらいしかありませんからね。見た目のデザインと、触り心地を左右する紙質にはとことんこだわりたい。ぜひともコネかカネを総動員して、ちゃんとしたデザイナーに作ってもらいましょう。

ちなみにぼくは自分でデザインしたものを、知り合いのデザイナーさんに入稿できるかたちに整えてもらいました。かれこれ10年以上使っていますが、インパクトがデカくいまだ好評です。

必要な情報は、名前とメルアドと電話番号!

それをとにかく大きくレイアウトする。なんせクライアントの多くは老眼入っていますからね。いまどきあまり使わない住所とFAXと肩書きは小さくてもかまいません。

腕時計


スマホがあれば腕時計はいらない。

正論です。

正論だけど、ぼくにはインタビュー中にスマホを取り出して時間をチェックする勇気がありません。かと言って、じゃあ腕時計で時間をチェックするのは失礼に当たらないのかと言えば、ぶち当たるケースもあるんですが、いまどき腕時計で時間を気にするのは「あなたの貴重な時間を無駄にせず、さっさと取材を終わらせますよ」というポーズに受け取られがちです。

スマホと腕時計、どっちも時間をチェックする用途は一緒なのに、なぜこうも印象が変わるんでしょうね。

きっとスマホの場合は、インタビューイーに向いていたアテンションが、それ以外に移ることが失礼だと受け取られるからかもしれません。腕時計だと時刻を確認する以外の用途がないからはた目にも安心(この辺、スマートウォッチはどう捉えられるんでしょう)。

知人のライターは、取材中あえてロレックスを外し、置き時計のように自分に向けて立てかけるようです。これには「取材の始まりと終わりを明示」「インタビューイーへの配慮」「だらだらと続く取材を終わらせる」「なめられがちなライターだけに一流ブランドでマウンティング」などさまざまな効果があるようです。

腕時計がややこしいのは、実用性や趣味性以上に社会性を含んでいるからかもしれません。

と言っても別にロレックスやオメガである必要ありません。ちゃんと腕時計をしている文明人、という属性をアピールできればOK。

ちなみに泣く泣く腕時計をするなら、ソーラー電波タイプがオススメです。秒単位で運行されているニッポンの鉄道を駆使するには、正確無比な電波時計機能があると便利だからです。



プリンタ


初稿では6つ目でネタ切れして、次項の「バックアップ」を捻出したわけですが、そういえばプリンタというライター道具があったことを思い出しました。これで綺麗に7つ道具ですね。

雑誌のページ校正や、書籍の大量の文字校正といったシーンでは、いったんプリンタで紙に出力してチェックした方が漏れが少ないように思われます。この際、色校でなければモノクロで出力して赤字を入れると、第三者から見ても一目瞭然でしょう。もっとも、全部メールで済ます場合は、PDFやOffice文書をモノクロ印刷して赤字を入れたのち、スキャナで取り込んでPDFで送り返さないといけないので、プリンタにはスキャナ機能の付いた複合機(特に自動原稿送り付きがオススメ)か、スキャナ専用機を別途用意せねばなりません。1ページ、2ページていどならスマホのスキャナアプリでも済ますことは可能ですけどね。

そもそもプリンタは請求書おこし(!)に必要です。いらねえか。

なお、プリンタを購入される際に悩ましいのが、家庭用として一般的なインクジェット型にするか、業務用に多いレーザープリンタにするかという点ですが、個人的な推しはモノクロレーザーです。出力した文字の美しさが段違いですので、大量に文章を読み込むライターにこそ使っていただきたい。トナーはめちゃくちゃ高いですけど、ランニングコストは安いし、インクジェットみたく無駄に使わないカラーカートリッジを用意する必要がありません。また、請求書の完成度も、やけにボヤけたインクジェットの文字に比べて、くっきりはっきりしたモノクロレーザーのそれで、一気にちゃんとした法人感が高まります。

かくいうぼくは、最近ほとんどプリンタを使っておりませんで、その理由は「簡単なページ校正ならiPadで完結してしまうこと」、そして「書籍の仕事をしていないこと」「紙の請求書を出さなくなったこと」などが挙げられます。なのでWebライターならいらなさそうだけど請求書を紙で送らないといけないなら必要だろうし、ブックライターならマストだろうけどすぐ近所にコンビニがあればネットプリントで出力すれば不要だろうし、要不要はケースバイケースでしょう。自分で考えて。



バックアップ


最後はざっくりしていますが「バックアップ」です。

なんせライター業では、ありとあらゆる不測の事態が起こりがち。肝心な時にスターターキットが機能しないことくらい想定しておくべきです。

そのうち誰もが予想できるのは、モバイルバッテリーでしょう。スマホやタブレットの電源切れに応対します。こうした事態に備えて、ノートパソコンやデジカメ、ICレコーダーなど電気が必要なガジェットは、基本的にUSBで充電できるモデルを選んでおくのが無難。パナソニックがんばれ。

そうそう、デジカメを買ったら予備バッテリーを買っておくのは基本中の基本です。Mac買ったらTimeMachine用に外付けHDDを買うのも常識。

モバイルバッテリーの利用にあたってはUSBやLightningの各種ケーブルも用意しておくべき。荷物をコンパクトにしようとすると短いものを購入しがちですが、実は長ければ長いほど使いではあります(3mくらい)。また、現場でデータを受け渡しするには、SDカード(リーダー)やUSBメモリもあった方がよいでしょう。

その他「予備の名刺」「予備のペン」「電子マネー(ほぼSuica一択)」「現金(1万円くらい)」「テレフォンカード」「クレジットカード(レンタカーを多用するならETCカード)」「身分証明書(免許や保険証)」「パスポート(突然海外取材が入ることがある。10年に1回くらい」あたりは用意しておいて損はありません。

でもって、究極のバックアップは、困った時に頼れるライター仲間です。できれば同じような境遇の、同じようなクオリティのライターと仲良くしているとよいでしょう。ダブルブッキングや病気など、何らかの事情で仕事を受けきれなかった場合、ピンチヒッターとして登板してくれる人がいると安心。そのためには、常日頃から仕事は独り占めせず、積極的にシェアした方がよいのです。すなわち同潤会。



おしまい


というわけで、ライターに必要な道具を、適当に書きつらねてみました。全部そろえると30万円弱でしょうか。でも究極、Surfaceと名刺があればなんとかなりそうですね。それだと10万円ちょっと。なりふりかまわなければ、5万円くらいでもなんとかいけそう。

検討と健闘を祈ります。