前回のエントリはどうも写真を添付すると、うまく更新できないので、このエントリ含め写真は、ナムチェあたりでまとめて追加します。ところで我がポーターの失踪ですよ。幸いロブチェに風邪ひき&金欠のポーターを置いて出た時、自分の荷物は全部持ってゴラクシェプ(カラ・パタールの丘、エベレストBC)に向かったので、ロブチェに戻った際、ポーターが書き置きも残さずにロッジを去っていても、さほど大きなダメージはなかったのですが、問題は推定10~12kgの自分の荷物を背負ってコンマ峠越えをしなくてはならないことでした。
これはですね。マジでキツかったです。ゴラクシェプ~ロブチェの比ではない。サンタ&ジョシュの2人はどんどん先に行ってしまうし、もちろんその方が気楽だったんですけど、それでも峠でぼくを40分近くも待ってたと聞かされると、申し訳ない気持ちになってしまいました。

これまでパーティーでは我がポーター・ボン氏がお荷物だったわけですが、彼が去った瞬間にお荷物はぼくになるわけですよ。しかもサンタさんにはお金なんて一銭も払ってないのに「何か持とうか?」なんて言われてみ? 普通の日本人なら、いたたまれなさマキシマムです。

そんなこんなで、彼らのサポートもあり、無事コンマ峠を越え、そこからガーッと下ってチュクンまで、かれこれ8時間ほどかけてたどり着くことができました。で、この旅程を知っているはずのボン氏ですが、当然チュクンに先回りするなんて機転を利かせているはずもなく。

ともあれ、これでレンジョ峠、チョ峠、コンマ峠という3つの峠を越えたわけですが、最後にゴーキョ・リ、カラ・パタールと巡った有名展望台のトリとしてチュクン・リにアタックすることになります。もっとも、チュクン・リは、カラ・パタールに向かうトレッカーがディンボチェでの高所順応の余興として登る山でもあるのですが、標高は5559mと今回クリアしたいずれの峠や頂の中でもっとも高いので、トレッキングの中盤に持ってくるイベントとしてはかなりハードな部類に入ります。

ぼくはといえば、ルンデン以降ほぼ毎日5000m越えの山行をこなしていて高所順応は十分でしたし、大きな荷物は麓のチュクンに置いていけたので、かなり余裕かなと思ったんですが、やはりそこそこしんどかったです。

また、チュクン・リには峠から、左に向かう低い展望台と、右に向かう本当の頂の高い展望台の2つがあるんですが、当初ぼくは低い展望台が最終目的地だと思っていました。そもそも低い展望台までほとんど休みなく歩いて2時間もかかった上に、これでいよいよ3つの頂も究めたとTweetやCheck-inしていたのに(このエリアは高い場所に行くと電波が入る)、ジョシュは「真の山頂に行く」と言うのです。

ゴールだと思っていたものが、本当のゴールじゃなかった時の徒労感てありませんか? それです。もうすでに、やりきった感でいっぱいだったので、「ぼくはいいや、峠で待ってる」と言ってジョシュだけ行かせることにしました。どうせあんな険しい岩山に登る人もいないだろうと。

それでぼくもいったん峠まで戻ったのですが、よくよく見ると険しい真の頂に登る人たちがちらほら見えるではないですか。中にはずっと前に追い越した、日本人のおじさん達の姿も見えます。

すでにジョシュは頂上に着こうとしているところ。今からぼくが向かってもキツい登りが30分以上続くでしょう。でもここで「果たしてこれでいいのか?」と自問自答してしまいました。そう、してしまいました。

せっかくネパールまで来て、なりゆきだったとはいえ3つの峠を越えて、3つの頂を究められるというチャンスを得たのに、最後の最後で中途半端に「はい、これでクリア」にしちゃっていいのか? ただ、低い山頂と高い山頂、どちらに行こうが、おそらく他人には違いがわからないし、今ここで頑張って高い山頂に向かうこだわりを見せても、さほど評価されるわけでもない気がします。

でも「もう多分よっぽどのことがない限り、ここに来ることはないな」と思ったら、「後悔はしたくないな」と思っちゃったのです。オーメダルと一緒です。バカバカ自分。

ただ、すでに山頂に登ってそろそろ下りてこうようとしているジョシュや、麓でぼくらの帰りを待っているサンタさん(コンマ峠で膝故障)を待たせて、迷惑をかけるわけにもいかない。そんなわけで、おそらくこの旅、マックスのスピードでガレ場を駆けあがりました。途中で日本人のおじさん達も抜きました。なおも駆け上がっていると山頂から下りてきたジョシュとすれ違いました。彼が「どうしたんだい?」と訊くので、ぼくは「行きたくなかったんだけど、後悔したくないから」と言ったら、ふたたび一緒に山頂まで登ってくれました。

山頂にいた時間は本当に短かったんですが、やはり景色は違うものですね。

そんなわけでチュクンに戻り、遅いランチを食べ、再び3人でディンボチェに向かいました。ディンボチェにはベーカリーもネットカフェもプールバーもあって、大都会だなと思いました。そしてここにもボン氏はおりませんでしたとさ。