去年9月に日帰り弾丸ツアーで訪れた「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」ですが、たったの12時間では主要な展示すらまわりきれず。今回はそんな未フォローの作品を中心に一人静かに…いやしかし、相変わらず慌てて見てきました。
朝10時に開けてくれた下条駅の『下条茅葺きの塔』(T253)。
面倒を看てるおじさんに、農耕具の説明などを受ける。これぞ、ふれあい!
神明水辺公園。川の流れが雪解け水でものすごい轟音。
ドミニク・ペロー『バタフライパビリオン』(T112)で何やらイベントの模様です。
いきなりですが、今回もっとも感銘した作品『小さな家』(T020★)。
カッパは展示ではありませんが、「読書中」や「抱っこして」などが可愛らしい。
奥地『うぶすなの家』(T120、121、122、123、124)。左のトラクターが元家主のじっさま。
昨夏2kmの大渋滞を起こした人気展示。冬は雪掘りが大変だとか。レストランはお休み。
なぜならおばちゃんが神明水辺公園の「山のごったく祭」に駆り出されてるから。
揚げたて山菜天ぷらうどん(300円)を食べつつ、パビリオンが機能する姿を見たり。
川西地区の『境界の神話』(K033)。つくしも作品の一部になってらあ。
続いて『パッセージ』(K034★)。背もたれにメッセージが刻まれております。
先を急いでいるのにセルフタイマーで自分撮り。唯一のカット。
トップ写真の『絵本と木の実の美術館』(T173)に到着。GW最終日で客は少ない。
田島征三って『ちからたろう』の作者なんですね。30年ぶりの邂逅。先生怖い。
現在は『ねぎぼうずのあさたろう』でお馴染み飯野和好展も開催中。カフェが素敵。
時間がないのでカフェを振り切ったのに、清兵衛で山かけそば(1000円)を食べてしまう。
冬場はただの立て看板になってしまう『人 自然に再び入る』(D047)。
パンツがすり切れるのを心配して滑り台で遊べないおっさんになってしもうた(D129)。
そろそろ褌の交換時期。赤は色が抜けるのよね。『帰ってきた赤ふん少年』(D194)。
去年まったくチェックできなかった松代の城山方面の展示。『砦 61』(D002)。
人がまったくいないので山の上までクルマで上がれるのが救い。
『米の家』(D066★)の上にもミニくまちゃんサイズの米の家が!
閑散とした里山をさらに寒々しくさせる錆びたモニュメント『木』(D016)。
電波塔のような『まつだいスモールタワー』(D070★)。階段が登りにくい。
よくぞ豪雪の重みに耐えた『WDスパイラル・パートⅢマジック・シアター』(K069★)。
やっちゃいけないんだろうけど、野宿スポットとして使えそうな展示がちらほら。
人気だったという『○△□の赤とんぼ』(D003)は車内からパチリ。
だんだん時間が押し迫って参りました。閉館しているかのような『農舞台』(D053)。
ここのトイレは『夢の家』同様に精神異常をきたしそうな色合い。
さらに用を済まして振り返ると、入り口がわからなくなる仕掛けつき。
現在は限界花道家によるアバンギャルドな作品が展示中。鎌や鍬は通常展示ですが。
来たはずなのに記憶がない『関係』(D058)『引き出しアート』(D218)。
公開なのか片付けているのか不明な『スキマをすすむ』(D115★)。人目がないので遊ぶ。
はい、サクサク移動して松之山エリア。登りたかった『ステップ イン プラン』(Y026★)。
多くの家は16時で閉館なのでまず『収穫の家』(Y036、035)。誰もいない。
係員さえいないので不気味にポエムが流れる『米との対話』(Y037★)。
ガーッと戻って『森の学校 キョロロ』(Y019★)。錆びた姿が不吉で素敵。
期待していた『超高解像度人間大昆虫図鑑』(Y041)ですが、展示が縮小してて残念。
閉館間際につき『大地、水、宇宙』『キョロロのTin-Kin-Pin』(Y021★、022★)を独占。
まだまだ雪に埋もれた山奥の展示もあるそうな…。
その他『メタモルフォーゼ』(Y020)『足下の水』(Y023)を観て、17時に宿を取る愚行。
さすが連休最終日、松之山温泉に自炊宿(3840円)が取れました。
明けて、本日の朝。レンタカーの返却がてら『アスファルト・スポット』(T067★)。
この展示、なめてましたけど、相当良かったです。人がいないので独り占め。
駅から歩いて開館前のキナーレへ。池を埋め尽くした古着がなくなってます。
前回は急ぎ足だったので、今回は学芸員さんの丁寧な解説とともにじっくり作品を観ました。
ただ、バルはGW明けから三連休だそうです。ショップは開いてます。
フジロックでおなじみのタナカクマキチでランチして帰京。以上です。
そもそも今回、越後妻有を再訪しようと思ったのは、現和光市長でR25ライター(お休み中)の松本さんのTwitterからでした。埼玉県和光市と新潟県十日町市は友好都市だそうで、それに関連して「現在公開中のアート作品ですよー」とつぶやかれていたのです。その作品数102点。トリエンナーレが確か300点の展示だったので、随分残っています。じゃあ、昨年フォローできなかったものを見るチャンスじゃないかと思って出かけたのです。
ゴールデンウィークの中日はイベントなどもあって、レンタカーが全部出払うなどそこそこ人出があったようですが、最終日は大人しいもので、クルマも宿も現地調達で間に合うくらいの余裕がありました。展示も独り占めできるものが多く、人が少ないため地元の方や学芸員の方とじっくり話す機会もあり、連休最終日ってけっこう穴場かも知れません(平日は家系の展示がおしなべて閉館しているため、行っても観られない)。
で、今回も個人的に感銘を受けた展示に★印を入れています。
まず『小さな家──聞き忘れのないように──』は、地面に掘られたコンクリートの小部屋が、あたかもシェルターや茶室のようでいて、その隔世感が素晴らしい。ここで一夜を明かしてみたいですね。ただ、直島の家プロジェクト・護王神社の暗く狭く涼しい回廊に似た雰囲気で、夏場になると蚊の温床と化しそうです。で、冬は雪に埋もれているんでしょうね、きっと。
そう、作品を管理するNPO職員の冬場の仕事は、ずばり雪かきなのだそうです。意外と展示に対するいたずらは少ないみたいなのですが(それでもトリエンナーレ会期中は、突如『No Man's Land』の古着の山を登ろうとする人がいたりして大変だったよう)、山間部ともなると積雪5mにもなるので展示の傷みを防ぐためにメンテナンスが欠かせないのだとか。すでに3年後のトリエンナーレの公募が6月に締め切られるのですが、その辺の越後妻有の風土を考慮した作品を提案すると北川フラム氏に気に入られるんではないでしょうか。
一応、サイトでは「展示中」となっていたので、遊んだ『スキマをすすむ』ですが、この辺の身体的な上下が逆転するような感覚は、近ごろまるで味わうことがないので非常に新鮮な体験でした。なんかねえ、最近全力で走ったり、転んだりといったエクストリームな体感を得ることがないのですよ。そんな、いいおっさんが一人で歪曲したすき間を縫って遊ぶ姿を見て、後から来た子どもたちが両親に「やっていい?」と聞いていたのですが、「ダメ!」と一蹴されていたのが可哀相でした。
展示の中では、ぜひ静寂のなか、一人で楽しんだ方が良い作品が多々ありまして、中でも『大地、水、宇宙』と『キョロロのTin-Kin-Pin』のコラボはその最たるものだったと思います。水琴窟の寂しい音色と、宇宙線由来の青い光線のなか、無限に続くかと思われる暗い階段をひたすら登る空間は、『銀河鉄道の夜』(アニメ版)のカムパネルラの心象風景のようでした。
明くる朝の『アスファルト・スポット』も写真で見るとなんてことはない、ねじ曲がった駐車場ですが、実際に訪れてみると、だまし絵のような、世界が、足下がぐらつく感覚が得がたく、不謹慎にも大震災とはこういう絵図なのかなと思い知らされた次第です。ここは中越地震の現場でもありますし、そういった意味が込められた作品なのかも知れません。
最後に訪れた『越後妻有里山現代美術館キナーレ』では、昨年夏と展示は変わらず、ただ中池の古着の山がなくなっていただけですが、学芸員の方につきっきりで各作品を解説していただき、ただ作品を観るだけではわからない意図や裏話をたくさん聞くことができました。
ちなみに古着の山は、トリエンナーレ終了後スタッフ50人がかりで1週間かけて撤去したそうです。もともと池なのでカビやら、見たこともない虫やらが大量に発生していて、大変だっととか。古着はさすがにもう着られないので処分して、クレーンも専門業者が解体したのだそうです。
その他、キナーレにまつわるオモシロ話としては、レアンドロの『トンネル』内のホンダバモスのサイドミラーがやたら折られるので、根元を柔らかい素材にして破損しないようにしたとか、炭化彫刻の『フロギストン』も客がぶつかって大破したことがあり、当初はその度に山本浩二氏が修復に来ていたとか、海外大御所アーティストの中には現地に一度も訪れず、「落書き?」とも取れる大まかな設計図だけ送って作らせたり──といったエピソードを聞くことができました。これもやはり、閑散期に訪れる醍醐味かと。
そんなわけで、トリエンナーレ開催時期はお祭り気分が楽しい越後妻有ですが、作品の独り占めや深掘りなどができる、それ以外の時期もなかなか楽しいものですよ。夏などはバイクで行ってキャンプしながら1週間くらいかけてじっくり鑑賞するのも良いかも知れませんね。そう思うと、夏休み期間中くらい家系は毎日開けてもらっても罰は当たらない気がするのですが。
で、今年は瀬戸内国際芸術祭ですね。豊島には行けていないので、夏か秋に1回くらいは訪れたいと思います。
関連リンク
・越後妻有 大地の芸術祭の里