
未明から3時間かけて4095mのキナバル山に登頂した直後、ぼくを待ち構えていたのは「ヴィア・フェラータ(Via Ferrata)」なるアウトドアアクティビティなのでした。イタリア語で「鉄の道」を意味するヴィア・フェラータは、第1次世界大戦中、イタリア軍とオーストリアによる険しい山岳地帯の国境線をめぐる争いの中で生まれた──鉄梯子やロープ、足場などを用いたエクストリームな──山行手段が、やがてスポーツへと昇華したもの。そして本場イタリア以外では、ここマレーシアでしか体験できないのだそうです。

キナバル登頂の興奮も冷めやらぬ7時半に3776m地点(富士山!)に集合。山頂からは30分。

参加メンバーは、日本語ガイドのジェリー、サバ州政府観光局の原田さんとハナちゃん。

ハーネスを装着して全員の体をロープで結んだら出発。囚人になった気分。

なお、ハーネスやカラビナの扱い方は、前日15時にラバン・ラタで受講せねばなりません。

早速なだらかに、そしてワイヤーなしでは確実に転落死する崖を下っていきます。

【募集】輪にロープを通し、鉄製ワイヤーにカラビナをかけかえていく簡単な作業です。

順番は先頭のジェリー、ぼく、原田さん、ハナちゃん、案内役のジェームス(撮影者)。

へっぴり腰のわたくし。ビビるっちゅうねん。

ジェリーはヴィア・フェラータ4回目ということで慣れたもの。

写真で見るとなだらかな斜面ですが、感覚的には断崖絶壁なのですよ…。

余裕をかましているようにも見えるし、腰が抜けて座りこんでるようにも見える。

ともあれ、この日は下の方がガスっていたため、思ったより高度感を感じずに済みました。

だんだん慣れてくる。というか、陽気なジェームスがみんなを撮影しまくる。

でも後から思えばここが一番楽しかったかもしれない。

こういうちょっとしたくぼみがホッとひと息入れられるポイント。

ミニくまちゃんも挑戦中。今回は合計6カメで追います。

「もしものことがあっても安全なんだよ」と安心させるためか、ジェームスの命令で手放し。

今回のコースは長短2コースのうち、長い「ローズ・ピーク・サーキット」です。

再び急な断崖を下り始めます。足場はあるけど、滑りそうで怖い。

なんか遙か下に吊り橋のようなものが見えますね。あそこ、渡るんですかね…。

ビビる我々そっちのけで、ニコニコと撮影するジェームス。

また手放し立ちのリクエスト入りましたー。

ミニくまちゃんもやります!

まあ、やってるのはぼくなんですけどね。

原田さんはこれが限界。

もうちょっとで一休みできるポイント!

しかしジェリーは振り返るたびみんなのケツばっかり見ていたことになる。

景色はとても良いけど、あまり見る余裕がありません。

ちょっと休憩して行動食と水分を補給。全行程平均で4〜5時間だからまだ序の口。

すぐまた休憩してますけど、ハナちゃんがいませんけど、まあ、そういうことです。

再出発。ハーネスは脱着が大変なのでレインウェアを着ていた方が無難かも。

で、だんだん高度が低くなって、ガスの中に入る。

崖にへばりつくようにトラバース。ジェームスは危なそうに見せる写真を撮る。

そうこうするうち、崖の向こうに消えるジェリー。

そっちには何があるんだぜ?

ギャー、あの吊り橋だった。

そろりそろりと吊り橋に乗る。

さらなる吊り橋の模様はビデオにて。

結果的には吊り橋なんて可愛いものだったのです。ガスってたし。

しかし晴れたり曇ったりだよ。

さらに下りていきます。ちなみにルート開発には平山ユージも関わったようです。

で、ジェリーが向かった先にあったのは…。

マジすか。ここ行くんすか?

3本のワイヤーブリッジェ…。

しかし慣れとは怖いものでして。ポーズする余裕すら出てくる。

いえーい、ジェームス見てるー?

「しかしタテ位置写真が多いよな」と編集者的視点でみんなのアングルを心配。

ここでキナバル固有種のメジロ的なものが見られました。撮り損なったものの。

さあ、まだまだ下っぞ!

だんだんロープとカラビナの掛け替え作業に飽きてきたころ、森が見えてきたー。

お、終点じゃん! ここまで全長600mだそうです。

はー、しんどかった。と言ってもまだ後半戦があるんですけどね。
そんなわけでロングコース、ショートコース2つあるうちの長い方の「Low's Peak Circuit」の前半600mが終わりました。ちなみに短い方は「Walk the Torq」といって、3520mの集合場所から8時にスタートするようです。最少催行人数は1人から。1チーム最大6名で一蓮托生です。
気が早いインフォメーションですが、このヴィア・フェラータの料金は長い方で約2万円、短い方で約1万4000円いたします。一見、高いように見えますが、4〜5時間くらいずっと遊んでることを考えると、妥当な値段なのではないかと思われます。問題は雨天中止になった場合で──
なんと払い戻しナシ! 1円も返ってきません。
サバ州政府観光局の原田さんも以前ショートコースで、ハーネスまで装着して「いざ!出発」という時に雨が降り出し中止になったようです。もちろん、翌日、翌々日と延泊すれば追加料金なしでチャレンジできるようですが、ラバン・ラタに泊まるだけでも1万2000円くらいかかりますし、誰しもスケジュールに余裕があるわけでもないですし、たとえ延泊したとして一度キナバル山に登った後に再び3272mに戻り、翌朝また3776mの集合場所まで登るのも過酷です。
なのでヴィア・フェラータに挑戦したい方は、はじめから2泊の予定でスケジュールを組んだ方が無難。だいいちキナバルに登頂してからヴィア・フェラータをやって、ラバン・ラタに戻り、さらに登山口まで下るのは大変ですよ。合計すると朝2時から動いて、登山3時間、ヴィア・フェラータ5時間、下山3時間半で、12時間以上も足腰に負担をかけることになります。実際にはそうやって下山してくる日本人の方ともすれ違ったんですが、きっとショートコースを体験したのだと思われます(そうですよね?)。
ともあれ、ほぼ核心部分のロウズピークセカの模様はこれにて終了。後はおまけと注意事項をしたためた後半をお送りします。
つづく。
関連リンク
・Via Ferrata|Mountain Torq
・コタキナコKOTAKINAKOコタキナバル
・Borneo Trails