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ZETTAI RED』『UNEEKERS』のパフォーマーで、いつも冷たい眼差しでおなじみSIMBAくん。ダンサーの彼が珍しく出演する舞台『新宿裏歌舞奇』の初回を新宿サンモールスタジオで拝見いたしました。
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新宿裏歌舞奇の幕開け
至極の見世物とくとご覧あれ

という触れ込みの作品は、気鋭の演出家・田中寅雄によるもの。タイトルやアートワークからすでに天井桟敷ムードですが、実際のステージもケレン味とハプニング感満載で、まさしく60年代のアングラ劇を21世紀にまで引きずっちゃったアナクロ感に満ち満ちておりました。

事実、セリフには寺山修司の戯曲『毛皮のマリー』から一部引用があったそうです。

劇場は新宿二丁目方面ですし、こういうの好きな人にはたまんないでしょう。かくいうぼくも往時の空気など知る由もないのですが(生まれてないし)、白塗りの紳士や、神経衰弱したアバズレ女優みたいなエレメントは大好きなので、ビジュアルだけでもおなかいっぱいになれました。

ただ、普段慣れ親しんだ演劇と異なるのは、役者だけでなく、SIMBAくんのようなダンサーや、津軽三味線プレイヤーが脇を固めていた点。特に、これといったドラマが展開されるわけでもなく、様々な言葉や音楽、舞踏の断片が目まぐるしく挿入される群像劇は、まるで即興で吟じられる詩のようでもありました。

…と、理解してたのですが、公演後SIMBAくんと話してたらちゃんとストーリーがあったみたいなんですね。あれれ。

このように門外漢がいい加減な理解で臨むと怪我するこちらの公演は、本日から4月19日まで。すでに土日の席はほぼ完売とのことですから、木金を狙われた方がいいかもしれません。

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【追記】
初回の夜、SIMBAくんと飲んだ時「くまさん、オレ今日の出来は納得できねえ」という反省の弁を聞いていたのですが、あれから公演を重ねるうち内容がけっこう変わったのことで、千秋楽に再び『新宿裏歌舞奇』を観に行って来ました。

確かに前説がすっきりしていたのをはじめ、構成も間もダンスもメイクも、ずいぶんメリハリがついて研ぎ澄まされていました。特に圧巻なのは、女王蜂の『燃える海』をバックに主人公・真裏が踊り狂い一転、桜吹雪が舞い散る豪華絢爛なエンディング。これを演じきる蝶羽(あげは)さんが実はニューハーフだったというプロフィールを踏まえて、あらためると鬼気迫るものがありました。

この戯曲は蝶羽さんのために書かれた、あのラストに向かって突っ走るための作品だとも言えましょう。この瞬間、この年齢、この場所でしか演じることができない、という点ではド派手なお葬式であったのかもしれません。

という印象です。ありがとうございました。

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