11月6日終了って、あと半月しか会期が残っていないじゃないですか。というわけで原稿と写真のクオリティそっちのけで「瀬戸内国際芸術祭2016秋会期」の感想と教訓をしたためます。写真は、オープニングイベントとして4日間開催された「円都空間」会場の、犬島製錬所美術館の発電所跡。なるほど、煙突空間でもあったんですね。
5年前、初めて直島に出かけた際のエントリ「知識ゼロから行く直島の旅」にも追記したのですが、今回訪れたのは直島、犬島、小豆島、女木島といった高松発着の“東の島”と、秋会期で公開された本島、高見島、粟島、伊吹島といった“西の島”を含めた8つの島々。
なかでも良かった作品はというと──
《bystander》片山真理(直島・ギャラリー六区)
今まで片山真理ちゃんの作品は、乙女チック程度の認識だったんですが、この作品群からは浜に打ち上げられた異形のまがまがしさがあって、こういうの昔はえべっさんと呼んだんだろうあな、と妙に関心しました。
《変幻自在の路地空間》目(小豆島・MeiPam3)
目の過去最高作は、相変わらず越後妻有の《コインランドリー》と、宇都宮での《おじさんの顔が空に浮かぶ日》だと思うんですが、新作もなかなか狂っていて良かった。
《オリーブの夢》ワン・ウェンチー(小豆島)
毎回瀬戸芸ごとに竹で編んだ巨大建造物を田園地帯にドカンと制作するワン・ウェンチー。今回もチルな気分に浸れるオリーブ型のコクーンでした。
《ククリヒメノソノ》入江早耶(小豆島)
掛け軸やパッケージに描かれた絵を消しゴムで削り取り、その消しカスで描かれていたモチーフをフィギュアとして再現する誰得作品です。必見は千手観音。80年代のまま取り残された子ども部屋も最高。
《Atem》笹岡由梨子(小豆島)
巨大なマペットとCG映像が織りなす、こういうのをかつてはアシッドムービーと呼んだのでしょう。とにかく観ているものの理解を超えて不安にさせます。
《日々の笑学校/粟島研究所》粟島芸術家村(粟島)
島の住民の思い出話をお代に、オーダーメイドの染め物を仕立てる《誰かのための染物店》ほか、粟島の記憶を昇華した美しい作品群でした。
《時のふる家》中島伽椰子(高見島)
古民家の中に突き刺さる光の束。日本家屋のノスタルジックな外観から、一歩足を踏み入れると途端に切り替わるソリッドな空間が印象的。
《Here, There, Everywhere》アルフレド&イザベル・アキリザン(伊吹島)
パラボラアンテナっぽいですが、素材はいりこで有名な伊吹島ならではのパネル。これでいりこ干し放題です。他には《トイレの家》石井大五の個室が素晴らしかった。
「イメージの力展」(高松・高松県立ミュージアム)
あまり期待していなかった展覧会ですが、世界中の異形の造形を集めていてなかなか見応えがありました。パスポート持参で1100円が500円になるのも嬉しいところ。
──このような塩梅。ほぼ1週間かけてまわったのですが、2〜3日ていどしか時間が取れない方は「会期中の週末は鬼混みする直島・豊島をパス」して、「男木島と女木島」「粟島と伊吹島」をそれぞれ1日で巡るのがオススメです。小豆島は、良い作品が広範囲に散らばっている上にハズレがかなり多いので、レンタカーで一気にまわれるなら、という感じです。その際は今回紹介した作品の他に、リン・シュンロンの《国境を越えて・潮》は外せないでしょう。ぼくはうっかりスルーしてしまいました。
その他ノウハウは「知識ゼロから行く直島の旅」の追記をご覧ください。
今回はまたしても東京港からフェリーで徳島に上陸し、高速を飛ばして香川にアクセスしたわけですが、行きも帰りも1日潰すうえ、バイク運賃をあわせて片道2万円もかかるので、よほどの好き者でない限りオススメできません。安さを求めるなら高松行きの高速バスなのですが、こっちは体が辛い。
となると一番バランスが良いのは成田空港からのLCC利用なんではないかと思われます。ただ、これも落とし穴があり、都心から成田までの移動時間やコストがかかること。さらには高松空港から市街地が離れているためこれまた移動時間やコストがかかること。そこでいろいろシミュレーションしてみた結果、飛行機代が1万6000円に迫るようなら、東京駅から新幹線で岡山駅に向かい、電車で瀬戸大橋を渡って高松入りした方が移動時間も短く体も楽ちんっぽいです。なんだかんだと片道2万円近くかかっちゃうんですけど、新幹線出張プランなんかを上手に組み合わせたらもう少し安くなるのではないでしょうか。
というわけで、これから瀬戸芸にお出かけする方の参考になりましたら幸いです。
関連リンク
・瀬戸内国際芸術祭 2016
なかでも良かった作品はというと──
《bystander》片山真理(直島・ギャラリー六区)
今まで片山真理ちゃんの作品は、乙女チック程度の認識だったんですが、この作品群からは浜に打ち上げられた異形のまがまがしさがあって、こういうの昔はえべっさんと呼んだんだろうあな、と妙に関心しました。
《変幻自在の路地空間》目(小豆島・MeiPam3)
目の過去最高作は、相変わらず越後妻有の《コインランドリー》と、宇都宮での《おじさんの顔が空に浮かぶ日》だと思うんですが、新作もなかなか狂っていて良かった。
《オリーブの夢》ワン・ウェンチー(小豆島)
毎回瀬戸芸ごとに竹で編んだ巨大建造物を田園地帯にドカンと制作するワン・ウェンチー。今回もチルな気分に浸れるオリーブ型のコクーンでした。
《ククリヒメノソノ》入江早耶(小豆島)
掛け軸やパッケージに描かれた絵を消しゴムで削り取り、その消しカスで描かれていたモチーフをフィギュアとして再現する誰得作品です。必見は千手観音。80年代のまま取り残された子ども部屋も最高。
《Atem》笹岡由梨子(小豆島)
巨大なマペットとCG映像が織りなす、こういうのをかつてはアシッドムービーと呼んだのでしょう。とにかく観ているものの理解を超えて不安にさせます。
《日々の笑学校/粟島研究所》粟島芸術家村(粟島)
島の住民の思い出話をお代に、オーダーメイドの染め物を仕立てる《誰かのための染物店》ほか、粟島の記憶を昇華した美しい作品群でした。
《時のふる家》中島伽椰子(高見島)
古民家の中に突き刺さる光の束。日本家屋のノスタルジックな外観から、一歩足を踏み入れると途端に切り替わるソリッドな空間が印象的。
《Here, There, Everywhere》アルフレド&イザベル・アキリザン(伊吹島)
パラボラアンテナっぽいですが、素材はいりこで有名な伊吹島ならではのパネル。これでいりこ干し放題です。他には《トイレの家》石井大五の個室が素晴らしかった。
「イメージの力展」(高松・高松県立ミュージアム)
あまり期待していなかった展覧会ですが、世界中の異形の造形を集めていてなかなか見応えがありました。パスポート持参で1100円が500円になるのも嬉しいところ。
──このような塩梅。ほぼ1週間かけてまわったのですが、2〜3日ていどしか時間が取れない方は「会期中の週末は鬼混みする直島・豊島をパス」して、「男木島と女木島」「粟島と伊吹島」をそれぞれ1日で巡るのがオススメです。小豆島は、良い作品が広範囲に散らばっている上にハズレがかなり多いので、レンタカーで一気にまわれるなら、という感じです。その際は今回紹介した作品の他に、リン・シュンロンの《国境を越えて・潮》は外せないでしょう。ぼくはうっかりスルーしてしまいました。
その他ノウハウは「知識ゼロから行く直島の旅」の追記をご覧ください。
今回はまたしても東京港からフェリーで徳島に上陸し、高速を飛ばして香川にアクセスしたわけですが、行きも帰りも1日潰すうえ、バイク運賃をあわせて片道2万円もかかるので、よほどの好き者でない限りオススメできません。安さを求めるなら高松行きの高速バスなのですが、こっちは体が辛い。
となると一番バランスが良いのは成田空港からのLCC利用なんではないかと思われます。ただ、これも落とし穴があり、都心から成田までの移動時間やコストがかかること。さらには高松空港から市街地が離れているためこれまた移動時間やコストがかかること。そこでいろいろシミュレーションしてみた結果、飛行機代が1万6000円に迫るようなら、東京駅から新幹線で岡山駅に向かい、電車で瀬戸大橋を渡って高松入りした方が移動時間も短く体も楽ちんっぽいです。なんだかんだと片道2万円近くかかっちゃうんですけど、新幹線出張プランなんかを上手に組み合わせたらもう少し安くなるのではないでしょうか。
というわけで、これから瀬戸芸にお出かけする方の参考になりましたら幸いです。
関連リンク
・瀬戸内国際芸術祭 2016