立山黒部アルペンルートの長野県側の入り口として、また北アルプス登山の拠点として、これまで幾度となく訪れている長野県大町市。いつもは下山後、立ち寄り湯に浸かって高速バスでそそくさと立ち去りがちではありますが、この夏は「大地の芸術祭」「瀬戸内国際芸術祭」の総合ディレクターでおなじみ北川フラム氏が手がける現代アートの祭典「北アルプス国際芸術祭」が開催されるとのことで、会期前にもかかわらずお邪魔したのでした。
大町市はこちら。長野県の北西部で、すぐお隣は富山県。北に72km進めば日本海です。
参考までにバスタ新宿から信濃大町駅までバスで4時間半。電車でも3時間半はかかる。
市街地エリア(信濃大町駅)
駅前の事務局へ。芸術祭でお馴染みの立て看板が今まさに納品されようとしている!
ピタゴラスイッチ的に静かに天井を流れるピンポン玉。原倫太郎+原游《はじまりの庭》。
近くのリノプロでは、同夫妻による《たゆたゆの家》が鋭意制作中でした。おつかれ様です。
これ、越後妻有でも見たやつや!大人のガラガラモビールといった趣き。キレイやな〜。
他にも市街地エリアにはぼくが好きな栗林隆作品ほか、全10作品ほどが点在しているのですが、まだ制作中のものが多いので、ここから「地元アートガイドとめぐるアートサイトツアー」のガイド用研修ツアーに同行します(途中、コースに含まれない作品にも立ち寄っています)。申し遅れましたが、この取材はプレスマンユニオンのご紹介で、北アルプス国際芸術祭事務局からお招きいただきました。
源流・ダムエリア西回りツアー
建設中のゴミ処理場に隣接した森に、川俣正《源汲・林間テラス》。
続いて、ぼくもよく利用する大町温泉郷へ。真っ赤な洞窟のインスタレーション。
大町に伝わる民話『泉小太郎』をモチーフに、和紙と竹で竜の胎内を再現しています。
こちらが《山の唄》を制作中の大平由香理さん。頑張ってねー!
お隣の森林劇場では、マーリア・ヴィルッカラ《ACT》が展示。
どうやら観客が主役になれる作品だそうですよ。お楽しみにー。
以前サイゾーでご一緒していた新津保健秀さんは、池上高志氏と音と光の作品を制作中。
続いて宮の森自然園へ。爺ヶ岳や蓮華岳方面がくっきり!
遠藤利克《Trieb──雨為る森──》は、木の上に設置した蛇口から水をぼたぼたと落とす。
うかがった際は調整中にて2本のみ出てましたが、実際には全15本にもなるとか。圧巻。
ただ木道は濡れると滑るので慎重に歩きましょう。マジで転びます。
隣の大出ホタルの里では平田五郎《水面の風景──水の中の光〜山間のモノリス》が。
数年前までゲンジボタルが飛び交っていた森。再びホタルを呼び戻すため濾過装置を設置。
熊とか普通に出ちゃうみたいなのでご注意くださいね。
温泉施設・心笑館の1階では岡本桂三郎氏が土で描いた巨大屏風《龍の棲家》を開梱中。
2階では栗田宏一氏が日本海側の地図上に現地で採集した土を置く。《土の道・いのちの道》。
ちなみに、大町で採集した土だけを集めた作品を松本信用金庫でこっそり展示中の模様です。
ラストは仏崎観音寺。ジェームズ・タップスコットの、霧と光の茅の輪《Arc ZERO》。
この裏山こそ『犀龍と泉小太郎』が晩年身を隠したという地。すんごい神聖なお空気。
ツアーは終わってますが、ダムまで足を伸ばしパトリック・トゥットフオコ《龍》。目!
ローカルに愛される仁科そば店
後編の前に、事務局の方に案内された蕎麦屋情報。地元の方に愛されている隠れた名店。
大盛りですがこのボリューム!水前寺清子や浜田幸一も訪れたことがあるそう。
ぼくは悪魔のカツ丼(800円)をチョイス。バナナとアイスコーヒーが嬉しい。
東山・仁科三湖エリア東回りツアー
東回りは山間部の八坂地区にある3世帯しかない押野集落から始まります。
ところどころに貼られたこの黄色いテープはなんでしょうね?
坂道を下ります。
はてな? ただ一点のビューポイントに向かいますと…。
今回もっとも話題を呼びそうなフェリーチェ・ヴァリーニ《集落のための楕円》。
彩度を上げてみましたが、曇りの日のパッキリさには勝てません。
続いてニコライ・ポリスキーの《バンジー・ウェーブ》。ハラショー!
八坂の竹を用いて富嶽三十八景の波を表現したとか。
まるで雪囲いのように巨大なのです。
内側に入って空を眺めるのも手。さて、大町市街を見下ろす鷹狩山へ移動します。
李蕢至(リー・クーチェ)《風のはじまり》は、森の木だけで組まれた台風の目。
これをたった3人、2週間で作り上げたんですって。木のトンネルがバックトゥザ童心。
で、今回も話題を呼びそうな目の《信濃大町実景舎》。ネタバレするので撮影禁止だよ。
霊松寺経由で木崎湖へ。アルフレド&イザベル・アキリザン《ウォーターフィールド》。
木崎夏期大学では、湖畔で暮らす杉原信幸氏による《アルプスの湖舟》が展示。
蚊帳とコメを用いて湖に映る北アを表現しています。マジ米粒!サメの歯みたくもある。
そして山はお隣に続く。
さらに外まで。
最後に完成したばかりの五十嵐靖晃《曇結い》。地元の人たちと天に昇る組紐を作成。
おまけの夕焼けと交流会
大町に住んだら朝から夕方までこの北アビューですよ。
夜は作家やボランティアが集まる飲み会に参加。酔っ払いすぎたよコタケマン。
会期中また行きます
ご覧の通り、多くの作品が制作中だった北アルプス国際芸術祭内覧会。あれとかこれとか重要なアーティスト&作品もまったくフォローできていませんし、もうひとつのテーマである食もほんのさわりしか味わっておりませんし、これは会期中に再訪せねばなりません。
というわけでノウハウフラッシュ。
・日帰りで全部見るのはまず無理!
・クルマがあっても2日は欲しい
・バス&自転車だと3日は覚悟したい
・直射日光は厳しく、木陰や日没後は凍える
・足元は防水仕様のスニーカーがベスト
・駅前にコンビニはなし
・鷹狩山に行く際は北アルプスが晴れている時に!
・駅から八坂地区まで自転車は無謀
・Tシャツデザインは皆川明(ミナ・ペルホネン)
・木崎湖は午後に風が出がち
また何かあれば追記します。
いずれにしましても、さすが北川フラムと言いますか、わずか35作品ながらも的を射たラインナップ、およびレイアウト。たとえ駄展示に出くわしたとしても、ふと空を見上げれば北アルプス、足もとには轟々と流れる雪解け水、鼻腔を駆け抜けるフィトンチッドの香り、といった里山のマテリアルの数々が、少なくとも旅情をかき立ててくるはずです。
関連リンク
・北アルプス国際芸術祭 Japan Alps Art Festival Official site